【書評】神様に一番近い動物〜人生を変える7つの物語〜




夢をかなえるゾウシリーズの著者、水野敬也氏の新刊「神様に一番近い動物〜人生を変える7つの物語〜
」のご紹介です。

作品タイトルにもある通り7つの短編物語が描かれていて、タイトルは一番最後の物語から来ています。

1つ1つのお話は登場人物・舞台になる世界が全く異なる物語ですが、どのお話にも僕達の教訓になることが書かれています。

描き方も夢をかなえるゾウのようにコミカルな部分もあってとても読みやすく、1日で読み終わってしまいました。

僕はいつも小説の世界に入り込むまでに時間がかかるのですが(なので前半と後半で読むスピードがだいぶ違います。)、水野さんの作品は、本当に小説の世界に入り込みやすくて最後までトップスピードで読むことが出来ました。

ネタバレになりますが、7つの作品の中で、僕の中お気に入りを紹介します。
どれも甲乙付けがたかったのですが、その中でも今後の世界の流れを考えたときに一番印象に残ったのは6番目の「愛沢」でした。

ネタバレが入るので読み飛ばしてください。

父親の代から営んでいる蕎麦屋のそばに、立食い蕎麦屋「蕎麦 愛沢」が出店した。

蕎麦屋の店主は、近くに出来た蕎麦屋の偵察に行き、驚愕した。

なぜならその店は、立食い蕎麦だが、出てくる蕎麦が品評会のグランプリを取れるぐらいのレベルだったからだ。

蕎麦屋の店主は、自分の店は座って食べるスタイルだったこと、昔からの馴染みのお客もいたことから、客層は被らないから問題無いと思っていた。

だが、そんな高いレベルの蕎麦を立食い蕎麦の値段で出しているのだから、あっという間にお客は「蕎麦 愛沢」に奪われてしまった。

危機感を覚えた店主は、これまでしなかった経営の勉強をし、お客を取り返そうとしたが結果は惨敗。

その後、店主は意を決して「蕎麦 愛沢」の店主愛沢に教えを請うことにした。

ダメ元で聞いたが、愛沢は快諾し、作り方から仕入れ先等、蕎麦に関すること全てを教えてもらうことが出来たのだった。

これで自分の店を盛り返すことが出来ると思って仕入れ業者に電話をした矢先、店主は困惑した。
それは、愛沢の仕入れ値では、とても利益が出ないことが分かったからだ。

このことについて愛沢に問いつめると、お客様の笑顔のために自分の給料はゼロにしていると、笑顔で言うのだからとても敵わないと思う店主であった。

愛沢がいる限り、自分の店が生き残ることは出来ないと悟った店主は、愛沢を殺害しようとバットで殴りつけた。

だが、首が折れた愛沢の首もとには、「AI沢 3号」の文字が刻まれていた。

愛沢の「愛」は「AI(人工知能)」であり、愛沢は人間ではなく人工知能のロボットだったのだ。

以上が愛沢のストーリーでした。

AIと将棋や囲碁の名人が戦い、破れるところまで進化してきました。また、iPhoneのSiriを始め人の声を認識して作動するAIも出てきています。

今後の世界は、愛沢のようにAIが人間の仕事を担う、または、それこそ物語のように奪う世界が来ているのかもしれません。

AIに仕事を奪われるのではなく、共存できるように考えて行かなければならない時代になってきたのだと思いました。

便利なAIを活かせる人間になる必要があると気付かされた物語でした。

余談ですが、AIに仕事を奪われると考えたときに思い出したのがドラえもんの映画、「ブリキの迷宮(ラビリンス)」です。この映画は、人工知能をもったブリキのおもちゃに人間の世界を奪われそうになるお話でした。
仕事だけでなく、世界を奪いにくるところまで進化したAI、恐ろしいですが現実に起きそうな予感がします。

神様に一番近い動物 人生を変える7つの物語
〜目次〜
三匹の子ぶたなう
お金持ちのすすめ
宇宙五輪
役立たずのスター
スパイダー刑事
愛沢
神様に一番近い動物