【書評】波のうえの魔術師




今回ご紹介するのは、経済小説「波のうえの魔術師」です。

著者は、池袋ウエストゲートパークを書いた石田衣良さんです。

本のテーマは、バブル時代に銀行が行い社会問題になった、融資一体型変額保険についてです。
融資一体型変額保険??って感じですが、いろいろと簡略化すると、銀行が相続税対策に銀行融資を斡旋してきたけれど、バブル崩壊によって銀行から返済を迫られたが返済できない個人が、担保にしていた自宅を追い出され自殺者まで出た問題です。

それではあらすじを紹介していきます。

大学を卒業したが就職先がきまらず、就職浪人を選び、仕送りとパチンコで生計をたてる白戸則道と個人投資家の老人小塚泰造がまつば銀行という大手銀行で預金額三十五兆円、総資産五十三兆円の都銀第三位の株価を暴落させて株取引で利益を得るために戦う物語です。

パチンコ屋の前に並んでいた青年を老人が選んだ理由は、まだ金を掴んでいない金持ちに見えたからだ。

スカウトした青年にやらせたのは「まつば銀行」の株価をノートに書かせ、実際に株式を取引させてみた。

老人が青年に何度か試験を与えるが、青年は試験をクリアし、ついにパートナーとして認められることになった。

バブル期に銀行は相続税対策として変額保険を勧め、変額保険を購入する資金を土地・建物を担保にし融資していた。

しかし、バブル崩壊とともに変額保険の運用業績は悪化し、融資の返済に追われ、担保にしていた自宅を差押えられるが、バブル崩壊後の不動産価格は下落し、売却しても借入の全額を返済できなかった。
返済苦から変額保険の保険金で支払おうと自殺する人もあらわれてきた。

そんなまつば銀行の株価を暴落させるべく、老人はあらゆる策を講じていき、青年も老人の手伝いをするため、女性に近づき内情を探って行きます。
あらすじは以上です。

老人が講じた策はどんなものか、何故そこまでまつば銀行にこだわるのか、そして二人の策は成功し利益を得ることが出来るのでしょうか。

ストーリーは、勧善懲悪となっており、日本人が好きな話の構成です。

株取引の専門用語も信用取引の「空売り」ぐらいなので、前知識が無くても割とスラスラ読めると思います。
 
ちなみに「空売り」を簡単に表現すると、通常購入→売却で株価の値上がり益を狙う取引とは逆で、市場から株式を借りて先に売却をし、値が下がったときに株式を購入し・借りていた株を返す取引です。

融資一体型変額保険の実情と簡単な株知識を得るにはオススメの本です。 

 

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